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さくら咲く

さくら咲く

出産当日

8月9日

夜中中、心臓のどきどきで苦しい時間を過ごしました。

「お腹を切ったら楽になる」

そればかり考え、手術までの時間を「あと8時間・・・。あと7時間・・・。」と一時間一時間数えて過ごしました。

お腹の張りの頻度も計り、記録していました。

10分だったり、15分だったり、まだ不規則でした。

まだ大丈夫。

緊張し続けましたが、明け方に少し眠ることが出来ました。


********


子供が産まれてくる夢を見ました。

私のお腹から取り出された子供は、両方の手のひらに軽く乗ってしまうくらい小さくて、

重篤な状態で産まれてきました。

唇が薄紫色していて、ピクリとも動きませんでした。

夢から覚めたとき、何でこんな夢を見てしまったのだろう、と

怖くなりました。

誰にも言えませんでした。


**********


8時半、手術が近くなったので、いよいよマグネゾールが外され、

点滴はウテメリンだけになりました。

やっと苦しみから解放された、と思ったら

その10分後くらいに、陣痛が始まりました。

その間隔は短くなり、5分おき間隔になりました。

痛かったけど、11時には手術なので黙って耐えました。

旦那と旦那のご両親、私の両親が来てくれました。

旦那は私の大きなお腹をビデオに撮っていました。

みんな、子供が産まれるのを楽しみにしてくれていました。


*********


いよいよ手術の時間になり、私はベットの上に寝たまま運ばれていきました。

家族が見守る中、私だけが手術室に運ばれました。

手術室で主治医の先生が待っていてくれました。

不安がる私に、いつもよりもニッコリ笑いかけてくれ、

「緊張しちゃいますよね」と言ってくれました。

手術の準備が始まると、私は麻酔ガスを吸わされ、

直ぐに意識を失いました。


***********


次の瞬間、「~さん、終わりましたよ」という声が聞こえてきて、

目が覚めました。

周りでガチャガチャと機材を片付けるような音がしていました。

ひどく意識が朦朧としていました。

それでも「ああ、本当にこれで終わったんだ」と、

そして「子供を産んだんだ」、という幸福感、達成感のようなものを感じてました。


口に取り付けられていた呼吸器が外された瞬間、

「子供は?」と聞きました。

傍の看護師さんが「運ばれていきましたよ」

とだけ言いました。

ひどく緊迫しているようでした。

そして言葉が足りないと思ったのか

「女の子でした」と付け加えてくれました。


*********


手術室を出て家族が近づいて来たのが分かりました。

私は安心させようと、頑張って手を振りました。

その後、視界は殆どありませんでした。

「1,2,3・・」という掛け声と共に私は手術台からベットへ移されたようでした。

その時お腹に鋭い激痛が走りました。

「やめて!!うごかさないで!!」と力一杯叫んでいました。

その後のことは記憶にありません。


**********


気が付くと、旦那がベットの脇の椅子に一人座っていました。

うつむいていたように見えました。

私が気が付くと、手を握ってくれました。

頭が望楼として最悪の気分でした。

体を動かすことが出来ませんでした。

喋ることも出来ませんでした。

でも子供に会うために「起きなきゃ」と思い、私は意識を保つように、

一生懸命旦那の手を何度も握りました。

でもまた直ぐに意識が遠のいていきました。


*********


次に起きたときも旦那がいました。

「子供は?」

やっとの思いで聞きました。すると

「うん・・。一進一退のようやな・・・」

と歯切れ悪く言いました。

このとき視界が殆どありませんでした。

もし旦那の顔が見えていたら、彼の嘘に気が付けたかもしれません。

私は旦那の言葉を聞いて、ただ子供が厳しい状態にいるのだと思いました。

また意識がなくなりました。



次に目を覚ましたとき、旦那の家族がベットの脇に来ていました。

「良く頑張ったわね」

旦那のお母さんが私に言いました。

まだ朦朧としていて、返事が出来ませんでした。

暫くして、旦那に

「写真は?」

と聞くと、

「ごめん、取ってないんや」

と言いました。

そして

「ビデオ・・・」

と言うと、

「ビデオ・・ああ、ちょっと待っててな」

と言ってどこかに行った気配を感じました。

そして戻ってくると、

「先生に頼んでみたけど、撮らせてもらえないんや」

と言いました。

旦那の精一杯の嘘でした。


*************


夜、10時くらいに仲良しだった妊婦さんが来てくれて、彼女の声に目がさめました。

このときが一瞬の小康状態でした。この頃、麻酔が切れてきたのだと思います。

視界もハッキリしてきて、彼女と会話が出来ました。



夜中、お腹の痛みが襲ってきました。

子宮の戻りがとても痛かった。

様子を見にきてくれた看護婦さんは、

少しでも私が楽な体勢になれるように、

体の位置を変えるのを、時間をかけて辛抱強く手伝ってくれました。

この時ほど人の手助けというものが有難いと思ったことはありません。

まだ自分の意思で上手く手足が動いてくれなかったけど、

必死に楽な体勢を作りました。

その痛みは明け方近くになって10分おきになり、

その痛くない間に休むことが出来ました。

朝になって、座薬で痛み止めをしてもらい、ようやく治まりました。


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